モンクレールのプリントを直す
ご依頼主は福井県のクリーニング屋さん
今回は福井県のクリーニング屋さんからのご相談でした。 「洗ったらモンクレールのプリントが剥がれてしまったんですが、直りますか?」というお電話がありました。
これまでトーア復元研究所では、数えきれない数のプリント衣類を直してきましたが、その中で最もご依頼の多いのが「モンクレール」、2番目が「ノースフェイス」です。 そしてモンクレールのプリント製品も相当多種多彩なデザインがありますが、今回はどのようなプリントなのでしょうか?
そうこうしているうちに、ご依頼品が到着しました。
開けてみましょう。
おなじみモンクレールのダウンジャンパーです。 このブログの読者様には既に見慣れたケースかも知れませんが、そのプリントの剥離状況をご覧に入れましょう。
プリント剥離状態を確認する
こちらが実際の剥離状態です。 プリントがかなり薄くなっている状態ですね。 プリントの剥がれていく状態にもいくつか種類があります。 代表的なものをご紹介しましょう。
だんだんに薄くなっていくケース
これは染料系やDTF系のプリントで起こる剥がれ方です。 昇華系でも似たように見えるものもあります。
シールのようにペリッと剥がれるケース
これは転写シート系のプリントで発生する剥がれ方です。 プリントのシートに塗られている接着剤の接着性能が、熱や寿命で性能低下が起きたために起こる剥離がこれです。 ジャンパーのブランドロゴなどで単色のものは、全体の60%程度がこのプリントで作られています。 このプリントは比較的原価が高いので、販売価格が高額になりがちなブランド品でないと、なかなか採用しずらい、という事情があります。
溶けたように剥がれるケース
これは染料系のプリントで起こる剥がれ方です。 この場合、プリントを直すために全部剥がしますが、その工程でも溶け出した染料を全てとるのに大変な苦労を伴います。 Tシャツなど比較的安価なプリントにこれが採用されることが多いです。 千円~数千円の衣類のうち、概ね80%程度はこのプリント方法が採られています。 この染料系のプリントは最初の版を作るのにはコストがかかりますが、版さえ作ってしまえば、その後のプリントコストが劇的に安くなるから、というのが理由です。
プリント部分の生地をほどく
最初に行う工程は、「プリントされている部分の生地をほどく」ことです。 その理由がこちら。今回だけでなく、プリント直しに絡んで生地をほどいたり、付属品を外したりするケースはいろいろあります。いくつかご紹介しましょう。
プリントの裏側にドットボタンやファスナーがある場合
プリントを新しくやり直す場合、土台が平らで固い状態である必要があります。 ですが、衣類というものはいろいろな金属の付属品が縫い付けていることが多いので、ドットボタンやファスナーなどがあると、そのままではプリントが出来ません。
ほどきを難しくしている部分とは
このモンクレールのジャンパー。 実はプリントの生地部分をほどくのも、また縫い直すのも大作業です。 その理由がこちらです。
新しいプリントを生地に貼り付けたところ
こちらが新しいプリントをほどいた生地に貼り付けたところです。 白地に真っ黒な文字がとてもよく映えますね。 あとはこの生地を縫い直すだけです。
生地の縫い直し完成
こちらが完成したところです。 ほどいてからデータ作成、プリント剥がし、プリント貼り付け、縫い直し、と大変多くの工程を経てようやくプリントを直すことが出来るのです。