袖ベルトが両方とも無くなった、という点に関して、私もいぶかしがって、「それって、本当に受け付けた時には両方あったんですか?」とご依頼主のクリーニング屋さんに聞いてみると、「それが、受付の人間は『最初から無かったと思う』と言うんですが、お客様の方が、『いや、絶対最初はあった!』とおっしゃるので、作成をお願いすることになりました。」とおっしゃるではないですか?!
実際問題として、クリーニング工程で無くなる場合、洗っている最中に取れる、ということが考えられますが、それでも両方取れてしまう、というのはあまりにも不自然です。 他にはアイロン作業の際に袖ベルトを取り外すケースがあり、それを付け忘れた、ということもありますが、このジャンパーのような素材では、そもそもシワにならないので、絶対袖ベルトを取り外すことはありません。 その上に受付担当の方の「最初から無かったと思う・・・」という説明から、状況証拠ではありますが、「お客様の勘違い」と考えるのが最も自然ですが、「絶対最初はあった!」と言い張られてしまうと、クリーニング屋さんの立場は弱いです。 その上、お客様がちょっと家の中を探して見つからなかった、という事実があると(もちろん、必死に家の中を探しては見たが見つからない、という可能性もありますが)、「あれだけ探して家に無いのだから、絶対最初はコート本体に付いていた」と結論づけるに足る証拠になってしまいます。
私としても、長年、クリーニング業でクレーム担当をしていたので、今回のお客様担当の方のご苦労も大変よく分かります。 腑に落ちないとは言っても、ご依頼主にお役に立てることに全力を尽くすのがトーア復元研究所の仕事です。
では次回から実際の作業工程についての問題点などを解説いたします。