剥がれたバレンシアガのプリントを直す
ご依頼主は北海道のクリーニング屋さん
今回は北海道札幌市のクリーニング屋さんからのご相談でした。 「洗ったらバレンシアガのジャンパーのプリントが剥がれてしまったんですが、直りますか?」というお電話の後、ご依頼品が到着しました。
開けてみましょう。
中には丁寧なお手紙も入っていました。 バレンシアガのジャンパーは以前やったことのあるデザインの色違いでした。 では問題のプリント部分をご覧に入れましょう。
プリントの剥離状態
剥がれたプリントはこちらのような状態でした。 よくあるプリント剥離状態で、これを見るとどのようなタイプのプリント素材が使われていたのかも分かります。 なお、プリントにはいろいろな種類のものがあります。 ここで代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
ラバープリント
比較的耐久性が高く、キレイな発色が特徴のプリントです。 デメリットとしては、通常、無地のものしか無く、色も30色程度の中から選ぶようになる、ということが挙げられます。
昇華プリント
フルカラーで、しかも精細な図柄や写真もそのままプリントでき、また耐久性もとても高いのが利点のプリント方法ですが、主に白のポリエステル生地でないと施工出来ないのがデメリットです。
シルクスクリーンプリント
市販されている多くの染料から色を選べて、かなり精細なプリントも可能なプリントです。 版が必要で版の作成にコストがかかりますが、一度版を作ってしまえば量産は大変安価に作成できるメリットがあります。
ラメプリント
きらびやかなラメが印象的なプリントです。 プリントした衣類が大変豪華に見えるようになりますが、着用やクリーニングなどの影響でラメが脱落したり、薬品で変色したりすることがあります。
金箔・銀箔プリント
金泊・銀泊のプリントは貼り付けた衣類が絢爛豪華に変身します。 大変人目も引くデザインに変わりますが、こちらも着用やクリーニングによる摩擦などで剥がれて来たり、薬品で変色したりすることがあります。
発砲プリント
発砲スチロールのように、見た目が膨らんでいるプリント。 大変ユニークなデザインを演出できますが、こちらも着用やクリーニングによる影響で発砲がつぶれたり、表面の塗装が剥げたりすることがあります。
トナープリント
コピー機のトナーと同じ原理でプリントする方式です。 フルカラーで精細な図柄や写真もプリント出来ますが、耐久性に劣る面があります。 特に油性の薬品に触れると剥離します。
ファスナーを外す
まずはこちらのようにプリントをする上で邪魔になるファスナー部分を取り外します。
データ作成
次のデータ作成の工程はこちらとなります。 データを作成する際の注意点もまとめています。
古いプリントを剥す
次の工程がこちらのように残っているプリントを全て剥がす作業です。実はこの作業がプリント復元の中で最も大変な作業と言えます。
ようやく剥がし完了
長時間作業して、ようやく全てのプリントが剥がれたところがこちらです。 はぁ・・・疲れた・・・
プリント貼り付け部署から戻ったご依頼品
こちらがプリント部署から宅急便で戻ってきたプリントされたご依頼品です。
プリントを貼り終えたジャンパー
こちらが今回のバレンシアガのジャンパーのプリントを新しく直したところです。 出来栄えを是非ご覧ください。あとはほどいていたファスナーを縫い付ければ完成です。
ファスナーを縫い直して完成
最終的に完成したのがこちらです。 プリントが新品になっただけで、ジャンパー全体が新品になったようです。今回、プリントを直すためにファスナーをほどく作業が必要でしたが、このように「別途、ほどくなどの作業が必要なケース」について、いくつかご紹介いたします。
ポケットが邪魔になるケース
プリントの真下に当たる部分にポケットなどの造作があると、問題です。 なぜかと言うと、新しく作成したプリントを貼り付ける場合、下はある程度固く平らな状態でないと、きれいにプリントがつかないだけでなく、すぐ剥がれてきてしまう危険があるので、ポケットなどの造作のために「平らな状態」が損なわれるのは困るのです。 こういう場合、ポケットをほどくなどして衣類から取り外し、下を平らな状態にしてからプリントを貼り、その後、元通りに縫い直します。
ドットボタンが邪魔になるケース
ポケット同様、ドットボタンやスナップボタン、そしてもちろん普通のボタンやボタン穴がプリントの真下にある場合もプリントをする際に下面が凸凹するために障害になります。






