剥離したモンクレールのプリント直しの全工程
ご依頼人からの最初のご相談の後、ご依頼品の到着、現状確認まで
今回は神奈川県のクリーニング屋さんからのご相談でした。 事前にお電話で、「モンクレールのエリに付いていたプリントが剝がれてしまったんですが、直りますか?」とお問い合わせがあり、後日送られてきました。
開けてみましょう。
中に入っていたのは白地に黒のプリント文字でMONCLERと書いてあったものが、剥がれてしまっていました。
実にこのタイプのモンクレールのダウンジャンパーは剥離が多いです。 同タイプものや、白黒逆バージョンのものなど、ずいぶんとこれまでもプリント剥離を直してきたので、もう段取りも決まっているぐらいです(笑)。 ではその段取りを順にご説明いたしましょう。
最初の工程は「プリント部分の生地の取り外し」
最初に行うのは、プリントがされている部分の生地をほどいて取り外す工程です。 その理由は上のリンク先に詳しくご説明しています。
新しく作成したプリントの貼り付け工程
こうして取り外した生地に、新しく作成したプリントを貼り付けます。 この作業は地方にある部署が行うので、どうしても時間がかかります。 しかしその出来栄えはお待ち頂いただけのことはあるレベルです。
最後にほどいた生地を縫い直して完成
そして東京の本部に戻ってきたプリントを施した生地は、再度、本体に縫い付けて完成となります。 是非その出来栄えを上のリンクをたどってご覧ください。
このようにトーア復元研究所では、剥がれたプリント製品を元通りに復元しています。 モンクレールに限らず、バレンシアガ、シャネルなどの高級ブランドはもちろん、ファーストダウンやザ・ノースフェイスなどの人気ダウンウェアの多くにもプリントロゴが採用されていますが、それらもこれまでに相当なご依頼を受けてきました。 トーア復元研究所は、今後も日本国内で他社はやっていない(恐らく世界的に見てもほとんど請け負い業者のいない)この「剥がれたプリントを復元する」サービスを必要としているご依頼主のお役に立っていきたいと日々研究を重ねております。
プリント製品というものは永久的なものではなく、いずれは剥がれてしまうものですが、最後に「プリント製品の寿命を縮める原因になることについてまとめてみましょう。 これらを極力避けることがプリント製品の寿命を伸ばすことに寄与するでしょう。
〇衣類の洗濯や乾燥の際に、激しい摩擦や高温の熱風がプリントの寿命を縮めます。 ご自身で洗う場合は洗濯機を使うより、風呂に洗剤を入れて押し洗いする方がプリントの寿命は維持されやすいです。 乾燥時に高温をかけるのは厳禁ですが、ダウンジャケットのような羽毛製品は、洗濯後、乾燥してから最低30分は回転式乾燥機(=コインランドリーの乾燥機のような機械)で回転させながら乾燥させないと羽毛が元通りにふんわりとなりません。 ですから、羽毛製品にプリントがされていたら、「プリントが剥がれるのを諦めるか、羽毛がふんわりしないのを諦めるか」のどちらかを選ぶ必要があります。
〇 衣類を頻繁に着用して洗濯すると、プリントが摩耗しやすくなります。特に、その衣類が高品質でないプリントを使用した場合、耐久性が低く、早期に剥がれることがあります。 これはある意味ジレンマと言えます。 「プリントが剥がれるのがいやなら、その衣類は着ない」ということになるからです。 それではその衣類を購入した意味がありません。 でもこれは事実なのです。 プリント剥離をあきらめるか、着用頻度を下げるか、のどこかで折り合いをつけるしかありません。
〇衣類のプリント部分に高温のアイロンをかけると、プリントが溶けたり剥がれたりすることがあります。アイロンを使う際には、適切な温度設定を選び、プリント部分を保護する方法(=当て布をするとか、ウラ側からアイロンを当てるとか)を検討することが重要です。 でも正直、プリントが剥がれないように検討するのに自身が無い場合、「プリント衣類はアイロンを掛けない」が一番の対処法だと思います。
〇衣類が他の表面と擦れることで、プリントが剥がれやすくなります。特に、バッグやベルトなどがプリント部分にこすれると、摩擦による損傷が生じやすいです。 最近、とてもプリント部分が大きな衣類が(特に超高級なブランドコラボ衣類)出回っていますが、それらを着用中にバッグなどの肩掛けベルトが当たってしまって剥がれてしまう、ということが意外に多いので、特に特に注意が必要です。
品質の問題: プリント自体が品質の問題を抱えている場合、耐久性が低く、剥がれやすいことがあります。高品質なプリントと適切な衣類素材を選ぶことが大切ですが、これは見ただけでは判断できません。 正直、クリーニングしたら剥がれた、とは言っても、「クリーニングのやり方が悪かったんだ!」と決めつけがちですが、プリントの品質に問題があることもある、という指摘をしておきたいのです。 代表的なのは「プリントをほどこす際の圧力と温度、時間」です。 これらが足りないとプリントは剥離しやすいものになってしまうのです。
日光や外部要因: 衣類が長時間直射日光にさらされると、プリントの色あせや劣化が進み、剥がれる可能性が高まります。また、雨や風、擦れやこすれなどの外部要因も影響を与えることがあります。 でもこれらについては客観的な尺度が無いので、避けるのは難しいかも知れません。
と、ここまでいろいろな問題点を指摘しましたが、それらをまとめると「プリント衣料は買わない方がいい」という結論になってしまいますね。 ・・・・・はい。 確かにそうだと思います。 でもプリントの長所は「デザイン性に富んだ衣類が作成可能」という一言に尽きると思います。 それを理解した上で、寿命はあるもの、と割り切って着用することが大事なのだと思います。 でも、それが将来、剥がれてしまって、どうしてもまだ着用し続けたい、と思ったら・・・・ その時はトーア復元研究所がお役に立てると思います。 是非、ご相談頂きたいです。