ヘルノのラベル破れ直し
ご依頼主は個人の方
今回は神奈川県の個人のご依頼主からのご相談でした。 「ヘルノのダウンジャンパーの裏地に付いているロゴラベルが割れてしまったんですが、直りますか?」というお電話があり、「それですと、数万円かかりますよ?」とお伝えしたところ、「このままだと、羽毛がどんどん出てきてしまうので、何か別の布でふさいでもらうだけでもいいのですが・・・?」とのこと。 なるほど、そういう直し方もあるか! と逆に私の方が勉強になりました。 確かに高級品としてもイメージは崩れますが、着用上問題ないと割り切れるなら、ロゴのラベルが無くなってもいい・・・と考えるご依頼主はいらしゃるかも知れません。 で、「それなら安価にできますよ」とお伝えしたところ、ご依頼品が送られてきました。 実は、この当時はまだヘルノのラベルを直すのに、非常にコストがかかっていて、お見積りをすると半分以上の方が諦めていらっしゃいました。 それからいろいろな研究の結果、現在はかなり安価なレベルにまでコストを下げることが出来ています。 もちろん、品質は変わらずです。
では、まずは今回のご依頼品を開けてみましょう。
なんと、お電話では聞いておりませんでしたが、そのヘルノのダウンジャンパーは二つだったようで、二つの袋が入っていました。 ご依頼主はかなりのヘルノファンでいらっしゃるようです。 その思い入れが深く伝わってきます。
では実際のラベルが剥がれた状態をご覧に入れましょう。
ヘルノのラベル剥がれ状態
こちらが今回のご依頼品のラベル剥がれ状態です。 なるほど、かなり破れてしまっています。これでは着用時には見えないとは言え、着るのはちょっと抵抗がありますね。 ちなみにこれまでトーア復元研究所で依頼されてきたヘルノのラベル破れのパターンをいくつかご紹介しましょう。
ラベルが完全に無くなっているケース
ラベルを構成している樹脂がほとんど全て無くなってしまったパターンです。 たぶんこういった状態になるのは、すでにかなり破れたり裂けたりしているのにそのまま着用またはクリーニングし続けてしまい、残っている樹脂がそれらの影響で取れてしまったものだと思われます。 なお、トーア復元研究所では、こういうケースでも直せるのでご安心ください。
裂け目があるだけで、欠損箇所がないケース
これは軽傷なパターンで、着用中やクリーニング後にすぐラベルに亀裂が入ったことに気が付いた、という方がこういう状態でご依頼されるようです。 ネットで「ヘルノのラベルを直します」という業者の中にはこのレベルのラベル破れなら「裏からテープを貼って裂け目が広がらない状態にする」ことで直したとしているところがあるようですが、その方法だと破れが広がりはしませんが、裂けている部分が目に見えますし、将来テープの粘着力が無くなった際にはさらに破れが広がることになりがちです。 トーア復元研究所のラベル直しなら、裂け目を完全にくっつけて目で見ても分からないレベルに出来るので、テープを貼る方法とは全く違うことが分かるでしょう。
一部が欠損しているケース
これがご依頼を受ける中で最も多いパターンです。 一部だけラベルの樹脂が無くなっていて、他は無傷か、裂け目だけある、という場合です。 ラベルが全部無いケース同様、トーア復元研究所では問題なく直せます。
もう一点のヘルノ
こちらが2点目のヘルノのジャンパーです。 同様にかなりひどく破れてしまっています。
直すにあたっての問題点
今回、ヘルノのダウンジャンパーの縫製状態が難題であり、簡単にはいかないことが分かりました。 詳しくはこちらをご覧ください。
安価な直し方
今回、ご依頼主のご希望で「出来るだけ安価に」ということで採用したのがこちらの方法でした。 トーア復元研究所ではこれ以外に「元のままに直す」ことも出来ます。 では、「元のまま」直す方法に関して、少しご説明しましょう。
最初にラベルを外す
ラベルを直すにはジャンパーに縫い付けられた状態では不可能です。 そのため一旦、ジャンパーからほどいてラベルだけの状態にする必要があります。 完成後にまたジャンパーに縫い付けます。
割れる原因は「硬化」
ラベルが破れたり破損してしまうのは、ラベルの樹脂が「硬化」して固くなってしまうからです。 直すためにはこの樹脂を特殊な薬品で柔らかくすることから始めます。
破損部分の補修
樹脂が柔らかくなった後は、裂け目を接着し、欠損した部分が同じ樹脂でふさぎます。 この作業がラベル直しでは一番神経を使う作業でもあります。
ロゴの印刷
補修が終了した後、薬品で印刷が消えてしまうため、再度印刷をやり直します。 この際、ヘルノはラベルの色がさまざまありますので、元々の既成色にて印刷します。
本体に縫い直し
こうして出来上がったラベルは、ヘルノのジャンパー本体の所定の位置に縫い付けて完成となります。 ですが、ここでも一部のデザインのものは縫い付けに工夫が要ります。
裏地が無い場合のラベルの縫い直し
縫い付けに工夫が必要なケースとは、「ジャンパーに裏地が付いていないケース」です。 この場合、ラベルをほどく時は問題ないのですが、いざ縫い付けようとしてミシンを使うと、ミシン糸が背中側に飛び出してしまうのです。 そこで、方法としては手縫いすることにより、背中に糸が出ないように工夫しながら縫い付ける、という方法を採るのです。
ヘルノのラベル交換完成
こちらが2着とも完成したところです。 安価なだけあって、見た目は今ひとつに思えるかも知れませんが、これはこれでしっくりいっている面もありますし、もうちょっと費用をかければ元通りのラベルにすることも出来るので、それぞれのご参考にはなると思います。





