無くなったコートの袖ベルトを作る
袖ベルトを失くした場合、販売店では売ってくれない
読者の方で、バーバリーコートの袖ベルトを片方だけ失くしてしまった・・・・という経験をお持ちの方は、何人かいらっしゃるかも知れません。 一方、そういう経験のない方は、「万一、袖ベルトを片方失くしてしまったら、販売店に行けば、袖ベルトだけ売ってもらえるだろう」と思っている方もいらっしゃるかも知れません。 ところが、実際に販売店に「袖ベルトを失くしたので、袖ベルトだけ売ってください」と購入に行ったとしても、100%近い確率で「それは出来ません」と言われてしまうのです。 これは、1万円もしない量販店のコートであっても、一着10万円以上するバーバリーなどの高級コートであっても、事情は同じです。 なぜ、袖ベルトだけを売ってくれないのでしょう??
袖ベルトだけ売らない理由1:海外で作っている
その理由の一つは「コートの製造を海外で作っている」ことによります。 しかも大量に作った後、継続的に何年も同じ生地で作り続けることはほとんどありません。 大量に作ったコート本体と袖ベルトは必要な数しか作らないため、余分な袖ベルトの作り置きが無いのです。
袖ベルトだけ売らない理由2:コート本体と同じロットでないと色が変わってしまう
ちょっと専門的な話になりますが、コートなどの衣類を大量生産する際、元になる布は「原反」という大きなロールに巻かれています(巨大なトイレットペーパーのような状態)。 それをほどいて等間隔に切って大きな一枚の布の状態にし、それを何枚も重ねて、一度にコートのパーツごとに切っていきます(これは糸ノコギリのような機械で行うのが普通です)。 この元となる原反ロールは同じ色、同じ濃さの染料で染めていますから、ロールのどの部分を切っても普通は「同じ色」をしています(これを「同じロットである」と言います)が、数日後に同じ色、同じ濃さの染料を使って染めたとしても、どうしても「ちょっと違った色」になってしまいます。 これはいろいろな要素がからむ話ですが要は「同じ原反ロールから切り取って作ったコートで一着を作らないと、色が変わってしまう」という大問題が発生するのです。 ですから、製造してからしばらく後に「袖ベルトだけ売ってください」と言われても、当然、その人のコート本体の原反ロールとは違うもので作ることになるので、色が異なる袖ベルトになってしまうため、「袖ベルトだけ予備を作っておいても意味がない」ことになるのでメーカーは予備の袖ベルトを作らないのです。
袖ベルトだけ売らない理由3:管理が煩雑
これは推測部分もありますが、コート1着につき、袖ベルトやライナーなどの余分な在庫を所持するには、それぞれに管理番号や保管設備を整備せねばならず、それらが将来、販売に結び付かない可能性も考えると採算的に難しい面は多分にありそうです。
なら、袖ベルトだけ失くしてしまったら、どうすればいいの???
まさに今回の都内の個人のご依頼主も、この災難に遭遇してしまい、他に当てがなくトーア復元研究所へご相談されたのでした。 そして届いたのがこちらのご依頼品です。
開けてみましょう。
言わずと知れたバーバリーロンドンの高級コートです。 では、失くなった袖ベルトについて、詳しくご紹介していきましょう。
作成する袖ベルトのデザインを観察する
まずは今回作成する袖ベルトの特徴などをよく確認してみましょう。 それはもちろん、現存するもう一方の袖ベルトを参照します。 詳しくはこちら。
生地を切り取る部分を探す
袖ベルトのために、コートから生地を切り取るときに「どこから取るか」が最も重要な点です。 こちらに詳しく解説しています。
生地を切り取る
生地を採取する箇所が決まったら、袖ベルト作成に必要なだけの面積分、裏側の生地を切り取り、空いた穴は在庫の布でふさぎます。 詳しくはこちら。
袖ベルトの外形が完成
バックル取り付け、各部縫製が済んだのがこちらです。 最後に「バックルピンの穴」を開ければ袖ベルトの完成となります。
袖ベルトの完成
こちらが袖ベルトが出来上がったところです。 併せて身返しの生地を切り取った跡もご覧ください。






