剥離した合皮を用いた衣類も直せます
最初のお電話に詳細をご説明しますので、ご納得の上でご依頼品をご送付頂きます。
今回は千葉県のクリーニング屋さんからのご相談でした。 「洗ったらコートの合皮部分が剥がれてしまったんですが、直りますか?」というお電話の後、ご依頼品が到着しました。 こちらです。
近寄って細部を見てみましょう。
全体的に合皮が剥がれてしまっています。 寿命という見方も出来ますが、おそらく最後のとどめは「乾燥機に入れてしまった」ことではないか?と思われます。
合皮の剥離状態の観察と、合皮の縫製について細かく検討する
今回のご依頼品のようにループの根元だけでなく、ループのヒモ自体も合皮、というデザインもあり、直すに当たっては洋服についている全ての合皮について検討する必要があります。
交換用の合皮の選定
次に問題なのは、「以下に似た合皮を調達するか」です。 この作業の成否が出来上がりに直結します。 今回特別に仕入れ先の様子もご紹介いたします。
合皮交換の出来上がりとご連絡
こうして見つけた新しい合皮を剥がれた合皮と交換し、無事作業完了となります。 その後、ご依頼主にお見せしてOKが出た後、お支払い、ご返送という流れになります。
合皮が剥離する原因
まとめとして、合成皮革が剥離する主な原因についてご説明すると、
〇使用頻度と摩擦により、合成皮革の表面は、摩擦や擦り切れに対して比較的脆い場合があります。特に、頻繁に使用され、擦り切れやこすれが生じる箇所では、表面の剥離が起こりやすくなります。
〇湿度と過乾燥も大敵です。 合成皮革は湿度の変化に敏感で、乾燥しすぎると硬くなり、剥離の原因となります。逆に高湿度の環境ではカビや細菌の発生を促し、合成皮革の劣化を引き起こすことがあります。 過乾燥とは乾燥機に長く入れすぎたり、温度が高かったりすることを言います。 過乾燥は極端に合皮の寿命を縮めます。
〇高温と日光にも注意が必要です。高温や長時間の直射日光にさらされると、合成皮革の表面が劣化し、剥離のリスクが高まります。車の内装など、夏季に車内が高温になる場所では特に注意が必要です。
〇高品質でない素材を用いて製造された合皮も問題があります。 合皮は塩化ビニールかポリウレタンを使用して作られますが、低品質な合成皮革は、耐久性が低く、剥離しやすい傾向があります。 でも新品の洋服に使われた合皮の素材が低品質かどうか、って判断できませんよね。
〇負荷の集中で剥離が起こりやすくなることもあります。合成皮革製品に重い物を乗せたり、負荷が集中するような使い方をすると、合成皮革の剥離が発生する可能性が高まります。
〇濡れた状態での保管:合成皮革製品を濡れたまま長時間保管すると、カビや劣化のリスクが増え、剥離の原因となります
などなど、扱いが非常に難しい合成皮革ですが、仮にこれらを全て回避したとしても、合成皮革には「加水分解」という大気中の空気の中の水分で弱くなって、いずれは剥離を起こします。 ある意味、「どうせ寿命が早いなら、短期間でいっぱい着よう!」という考え方の方が一番合皮の衣類を着こなすには合っているかも知れません。