電話に出たご依頼主は、私がトーア復元研究所の担当だと分かると前置きも無く、「すぐに始めてくれ。いつ出来る?」と大変横柄な感じで、あまりにビックリした私にさらに「おい、聞いてるのか?」と畳みかけてきました。 これにもビックリです。 私はまずテストして、どの程度取れるのか、料金はいくらなのか、なんどについて連絡すると約束しましたが、電話しながら「こんな横柄な態度の人の依頼を受けて大丈夫だろうか・・・?」と大変心配にもなりました。実際、火災に遭った衣類のスス汚れや臭いを取る、というのは大変ナイーブな作業ですから、100%ご依頼主の期待に応えることが出来るとは限りません。 そのためにギリギリ可能な品質を事前にご提示して、責任をもって提示した結果を出す、という「ご依頼主とトーア復元研究所の信頼関係」の上に成り立っているのですから。私が日ごろ最も気を付けているのは、「こんな仕上がりではガッカリだ」と思われないように、事前のテストを入念に行い、出来るだけ正確な出来上がり状態の説明を行っています。 実はこの「事前に結果を100%近く推測して提示する」というのが、地味ながらもトーア復元研究所の最高のノウハウと言えます。 この十数年間ひたすらこのことについて研究してきたと言っても過言ではありません。
さて、結局、心配ながらも仕事を引き受けた私でしたが、その晩、届いたメールを見て、この心配が不要なものだったことが分かりました。(つづく)
裏話 8
202311/29