では脱色の状態を見てみましょう。
ワンピースの右スソだけに、手の平二つ分ほどの大きさの脱色があります。 これは大きいですね。
こういった脱色を起こす原因でよくあるのは、クリーニング前になんらかの薬品が付着していて、それがクリーニング時に溶剤と反応して脱色を起こす、というものです。 その多くはクリーニングに持ち込まれる前の着用中に起こることが多いのですが、問題は付着した際はまだ脱色を起こしていないため、着用していた人は、何かが付着したことを忘れてしまっていたり、そもそも気が付きもしなかったりするので、「絶対クリーニングのやり方が悪かったんだ!」と決めつけられてしまうのがオチです。 クリーニング業者としても受け付けた段階では脱色を起こしていなくて、目にも見えないのですから防ぎようもありません。 結論、こういった事故が起こった際の最善策はお客様にお見せする前に目立たないようにまで色掛けで直してしまう、ということに尽きます。 ところがこの色掛け、私のように自分でできればタダですが、外部機関にやってもらう、となると結構費用がかかるので、結局「色掛けの費用と弁償したときの費用を比べて安い方にする」というのが一つの業界の基準だったりします(もちろん、弁償という訳にはいかない、という、例えばご親族の形見、などということになると話は別ですが・・・)。
ちなみに、クリーニング屋さんでも色掛けや染めも出来る方もいらっしゃいます。 ところがこれらの技術を身に付けるには、相当な時間と費用と根気が必要です。 私の推測ではクリーニング屋さんの1割程度しか、そういった方はいないのではないか、と思います。
さて、雑談が長くなりましたが、次回からこのワンピースの脱色を色掛けで直す工程をご覧に入れましょう。