衣類に発生した毛羽立ちを直す
最初のご相談からご依頼品の送付、状態確認まで
最初のご相談はお電話かメールで届きます。 状況をお伺いして分かる範囲でお答えし、ご納得いただいたご依頼主が宅急便でご依頼品をご送付くださいます。 もちろんご来店も可能です。
ご依頼品の毛羽立ち状態や復元可否を判断します。
ではそのワンピースの毛羽立ち具合を見てみましょう。
ちょっと遠目では見えませんので、近寄ってみてみましょう。
なるほど。 ボソボソと生地表面に細かい糸引きがあります。 これはかなり厄介な状態と言えます。 トーア復元研究所では、生地の糸引きを直すことも出来ます。 これはインターネット上でよく出回っている「裏に引っ込める」方法ではなく、生地の中にきれいに戻す、という方法なのですが、キレイに直す絶対条件として「糸が切れていないこと」があります。 切れていると、戻そうとしても最後に穴になってしまうからです。 今回のご依頼品の糸引きは、全部の糸が切れているので、かなり厄介な状態なのです。
実際に毛羽立ち直しの工程に入ります
状態の確認が終わったら方針を立て、いろいろな工具を用いて毛羽立ちを直していきます。 実際の作業工程は上のリンク先をご参照ください。
毛羽立ち直しの完成と写真のメール送付、ご返送まで
こうして完成した毛羽立ちを直したところは写真でご依頼主にお見せし、OKを頂いた上でのお支払い、ご返送となります。
最後に衣類の毛羽立ちの原因について、いくつかご説明したいことがございます。 毛羽立ちは通常、「生地が何かにスレたことで発生する」ものですが、その原因によって症状が違いますし、復元の可否も変わってきます。
〇クリーニングや回転式乾燥機(タンブラー)における回転動作で衣類がスレることで発生する毛羽立ちは、通常衣類全体にまんべんなく発生します。 こういう場合、ポケットの中やスラックスのスソの折り返しなどはスレにくいため、ほとんど毛羽立ちが発生しなかったりするので、こういう症状の場合、洗濯や乾燥が原因の可能性が高いです。
〇ショルダーバッグや手持ちバッグ、車のシートベルトなどで衣類の特定の場所が毛羽立つことがあります。 これらは着用時に頻繁に同じ位置がスレるので、着用者がその原因に心当たりがあるのが普通ですが、中には「思ってもいなかった」というケースもあり、それがクリーニング時に気が付いて「洗い方が悪かったから毛羽立った!」というクレームになる事例もあります。
〇そしてもっとも厄介なのは、「食事中に食べ物や飲み物を衣類にこぼしてしまって、それを取ろうと濡れたタオルやおしぼりでゴシゴシこすって出来た毛羽立ち」です。 これはゴシゴシこすった直後はその部分が濡れているので毛羽立ちに全く気が付きませんが、乾くと大変目立つようになります。 しかも乾いた後にその場所をちゃんと見ずにクリーニングに出したりすると、当然、クリーニング後は乾いていますから毛羽立ちが目立ってしまい、それを見たお客さんは「こんなところに毛羽立ちは無かった!」とクレームになるケースが多々あります。 しかも悪いときはシミを付けてゴシゴシこすったことをすっかり忘れていたりすると、もうクリーニングのせいとしか思えない、という感情を持つ人もいたりします。
このように毛羽立ち一つとっても、原因はいろいろあり、はっきり特定できる場合もそうでない場合もあります。 そしてそれらの復元可能性は、これもケースバイケースと言えます。