ネクタイがよじれて直らなくなった場合、ほどいてプレスし直すことで再生できます。
最初のご相談からご依頼品の送付、現状確認まで
最初にお電話やメールでネクタイのよじれについてご相談いただきました。 分かる範囲で直せるかどうかのお答えをしてご納得いただけましたら、ご送付頂いております。
届いたネクタイの状態を確認し、大体のケースでは一度ネクタイをほどいてプレスし直し、再度縫い直す工程を踏みます。
今回は軽傷だったので、ほどく作業をしないで済んだ分、費用は安く上がりました。
今回のご依頼品はそれほど重症ではなかったので、アイロン作業のみでヨレヨレを直すことが出来ました。
こうして出来上がったのがこちら。
無事、ヨレヨレ感の無い、普通のネクタイに戻せました。 ちなみに、着用していただけでヨレヨレになった原因を調べるために一部ほどいて確認してみたところ、最初のネクタイの生地の裁断の段階できちんとした正バイアスになっておらず、それがヨレヨレの原因になっていました。 生地を裁断してネクタイなどの衣類を作る場合、その裁断の仕方(=切り取り方)次第でネクタイの本数が多くなるので、正バイアスでなかった原因はコスト削減で一枚でも多くの生地を切り取ろうとしたからではないか???と勘繰りたくなってしまいます。 もちろん、何かの手違いの可能性もありますから、一概に決めつけられませんが・・・
いずれにしても今回のご依頼品は無事直してご依頼主へお返しできたので、ホッとしました。
今回のエルメスのネクタイは、着用していただけでよじれていってしまった、とのことでしたが、トーア復元研究所にご相談いただくネクタイのよじれやヨレヨレ直しは、「間違って洗濯機で洗ってしまった」ということでご相談いただくことがほとんどです。 この洗濯機で洗ってしまったケースでのネクタイ復元について、ちょっとご説明しましょう。 ネクタイを洗濯機で洗ってしまった場合、ほとんどが脱水まで行っていますので、直したとしても下記のような支障がある場合があります。
(1)脱水によってネクタイ表面がこすれて毛羽立ってしまい、ネクタイを復元した後に毛羽立ちが「白っぽく」なって見えることがあります。 これはくしゃくしゃの状態では分からず直してみて初めて目立つようになります。
(2)洗ってしまったことでネクタイが完全に水を含んでしまい、縦糸とヨコ糸の寸法が狂うことでネクタイ全体が歪みます。 そのため、その歪みを縫い直した際に裏側に持っていきます。 すると着用時は表からは分かりませんが、ネクタイを裏返すとウラのネールラベルが右や左にズレたり、縫い直せ部分が右や左にズレたりすることがあります。
(3)強く脱水されてしまっていると、絞りシワが完全に取れないことがあります。 そうなると、正面からは見えなくても、着用時に斜め上から見ている自分からはそのシワが見えたりします。
このように、間違って洗濯機で洗ってしまうと、ただ着用していただけでよじれてしまった場合より、いろいろなリスクが発生します。 くれぐれも洗濯時にはネクタイを混入させないように気を付けましょう。