では問題の安全ピンの跡を、よく見てみましょう。
ネームラベルの上部に、しっかり2カ所の穴が空いています。もう一着は?と言うと、
こちらもほとんど同じ位置に2つの穴が空いています。
読者の皆様もご存じの通り、穴が2つ空いている理由は安全ピンを刺して、さらに針をすくい上げて飛び出した安全ピンの針を安全ピンの頭部分に格納しなければならないので、合計2個の穴になってしまうのです。 そしてさらに問題なのは、その状態でクリーニングすると、衣類が回転する洗濯機の中で激しく動きますから、針が刺さった状態でネームラベルに空いた穴をさらに広げんばかりに安全ピンの針も動くので、刺した穴はさらに広げられて大きくなってしまいます。 およそドライクリーニングの洗浄中に15分(クリーニング工程によって増減はあります)、さらに乾燥工程で20~40分も同様に機械の回転動作によって安全ピンの針はネームラベルの穴をさらに広げんばかりに動き回りますから、その結果、こんなに目立つ大きさにまで安全ピンの穴が広がってしまったのです。
説明が長くなってしまいましたが、要するに「これを全くの元通りに直すことは至難の業」だと言うことです。 結論、ご依頼主の親子様には、出来る限りのことはしますが、うっすら穴が残るかも知れません、とご説明したところ、それでもいいので・・・と言うことで正式にご依頼を受けました。
では次回から、この2着のコートのネームラベルに付いた「安全ピンの穴」を直す工程をご覧に入れましょう。