その他の部分も、同様の手順で色移りのしみ抜きを進めますが、袖ベルトの跡と違い、胴体の部分は範囲が広く、例えば「胸全体」といったように広範囲を薬品を筆に付けてしみ抜きを数回ずつ行うのには非常に時間がかかります。 しかもほとんど「ぼんやりとした」状態なので、見る角度を変えたり、斜めにしたり・・・を繰り返してシミの箇所を特定するにはとても時間がかかりました。
でも、ようやくそれが終わったのが、こちらです。
細部をよく見てみましょう。
写真では分かりにくいと思いますが、実物にしても「これはシミか? 影か?」といったような疑問を持ちながら進めざるを得なかったので、終わった時も爽快感に欠けます(汗)。 これはボアという起毛生地がその特性上、起毛の裏側が影になってしまうので、白い織り生地と違って、もともと「真っ白」には見えないことが原因です。
しかしながら、この仕上がりをご依頼主にお見せしたところ、無事、OKとなり、ご返送できたのにはホッとしました。ご依頼主自身もお客様に「真っ白!という出来上がりには出来ない」旨のご説明をし、ご納得を頂いていたことが奏功したそうです。 しみ抜きという仕事はお客様への事前の説明というものが、非常に重要だという、とても良いケースだったと言えます。
いやぁ・・・それにしても今回は大変でした。 本来、白のボアを取り外せれば、丸ごと薬品に浸けて簡単に色移りが取れたのですが、それが出来ない上にたくさんの合皮が縫い付けられていたので、それらをよけながらのしみ抜きになったことも難易度を上げた原因でした。 まずは無事収められてめでたしめでたし・・・・ということで。
ではまた次回。 別のご依頼品をご紹介いたします。