前回ご説明したように、しみ抜きで落ちてしまったと思われる青い染料にあたる色を変色部分に乗せてみたところ、ここまで変色が目立たなくなりました。
近寄って細部を見てみましょう。
しみ抜きした時の影響でニット生地にも多少のダメージがあり、完全に周りと同じ色には出来ませんでしたが、このレベルであれば、変色していたことを知らない人には全く分からないでしょう。 ご依頼主にもお見せしたところ、すぐOKを頂けたので、早速ご返送して、今回のミッションは終了しました。
今回のようにしみ抜きというものは、時として思わぬ結果を生んでしまうことがあります。 直らなければ、結果的に「弁償」という形でクリーニング代金の何倍(または何百倍)もの支払いをする羽目になり、それが元でしみ抜き自体を止めてしまった、というクリーニング屋さんの話はよく聞きます。 この点、よく聞かれることですが、「トーア復元研究所さんでは、しみ抜きで失敗したりしないんですか?」という質問を受けます。 「それは永年の経験から・・・」と言えば格好がいいでしょうが(笑)、実際は経験はアテにしません。 いかに以前やったことがあるシミと同じと思っても必ず「ある特殊な工程」を踏んで、しみ抜き後に思わぬ結果にならないか確認してから作業を行うので、失敗ということがまず無いのです。 日進月歩の衣料品業界において、「これまでの経験」というものほど当てにならないものはありません。
ではまた次回。 別のご依頼品をご紹介いたします。