剥がれたプリントを直す
映画「アキラ」のプリントも直せます
皆様、新年あけましておめでとうございます。 今年も技術向上に努め、より多くのご依頼主のご期待にお応えするべく頑張ってまいります。
さて、今回は個人のご依頼主からのご相談でした。 トーア復元研究所では主にクリーニング屋さんが洗った結果、衣類が着用不能な状態になった場合に、それを元に戻すことを目的にサービスを始めたのですが、実際に始めてみると、ご依頼主の半分以上が「個人の方の自分の衣類」であることが分かりました。 今回もそんな個人の方がご依頼主です。
「ジャンパーに『アキラ』の金田の着ているデザインのプリントがしてあったのが、剥がれてきてしまったんですが、直せますか?」というお電話の後、ご依頼品が到着しました。
最初、「金田のジャンパー??」と思った私でしたが、開けてみてようやく理解できました。 ではその問題のプリント剥離ジャンパーを次回の記事でご覧に入れましょう。
袋から出てきたのは「アキラ」のプリント?!
最初分からなかったご依頼品の意味が梱包をほどいてようやく分かりました。 こちらをご覧ください。
プリント用のデータ作成
最初に行うのが、「データ作成」です。 剥がれたプリントの画像をスキャンして、それをトレースするのですが、この時大事なことがあります。 詳しい解説はこちら。 なおプリントの状況によっては、データ作成の前に行わねばならない工程が発生する場合もあります。 いくつか代表的な例をご紹介しましょう。
プリントの下に造作がある場合
プリントがされている分部の下に、裏地の縫製やファスナー、ドットボタンなどがあると、プリント面にプレス機を押し当てた際に平らな状態にならないので、新しいプリントがキレイに付かなかったり、突起物の跡が付いたり、最悪、くっつかなかったり・・・といったことが発生します。 では、そういう場合はどうするか? と言うと、その場合はそれらの付属品の縫製やボタン取り付けをほどいて、新しいプリントを施工した後、再度縫い付けたり、ボタンを取り付けたり・・・という作業を行うのです。 当然それらによる費用の増加や納期の延びなどは避けられません。
プリント部の周辺が汚れている場合
プリントが剥がれている分部の周囲、または衣類全体がかなり汚れている場合は、その汚れを目立たない程度にまで落としてから新しいプリントをする必要があります。 なぜかと言うと、古いプリントを剥がす際にノリを取るために薬品を使いますが、その薬品が洋服の汚れも取ってしまうので、そのままだとプリントの周囲だけがキレイになってしまい、非常に見た目が変になってしまうからです。
トーア復元研究所の設備に無いプリントの場合
トーア復元研究所では多くの衣類で採用されているシートタイプのプリントとフルカラープリントに対応したDTF系統のプリントが施工可能ですが、その他のプリントについては都内の外部の部署に依頼するようになります。 その場合、お見積りや部署までの往復などで長めの納期が必要になります。
剥がれかけたプリントをすべて剥がす
次に行うのが「プリントを全部剥がす」工程です。 実はこの工程がプリント復元の中で最も大変です。 ではその様子をこちらでご覧ください。 なお、プリントにはいろいろな種類がありますが、それぞれ剥がす場合に簡単に剥がれるものもあれば、大変苦労するものもあります。 いくつか例をご紹介しましょう。
比較的簡単に剥がれるケース
転写シート系のプリントで、ポリエステル・ナイロン生地に張り付けたものは、比較的剥がしやすいです。 ものによっては指で引っ張っただけでシールのように剥がれるものもあり、逆に言えば、こういう製品はプリントの寿命が著しく低い、とも言えます。
プリントの色が周りに滲み出してしまうケース
染料系のプリントは、取ろうとすると染料が液体に戻ってしまうので、そのまま周りに滲み出してしまい、それを取るには「染み抜き」の知識が必要になります。 当然、薬品や機材も揃っていなければならず、トーア復元研究所のようなプリント直しの専門業者に頼むより他にない状況になってしまうので注意が必要です。
まったく剥がれないケース
ときには何をやっても全然剥がれないプリントというのも存在します。 その多くはまだ製造から日が浅く、プリントの接着剤が強固に残っている場合です。 通常数年たつと接着剤はだんだん接着能力が下がってくるので、薬品などで取れやすくなりますが、こういったプリントは何をやっても剥がれません。
剥がすと跡が消えないケース
フロッキープリントやラメプリントなどの中には、剥がした後に接着剤が残ったり、跡が広がってしまったりするものがあり、これらは下手に剥がすと新しいプリントをしたとしてもはみ出した跡が目立ってしまうことがあり、実質的には剥がせない部類に含まれます。
プリントを全て剥がし終えたところプリントを全て剥がし終えたところ
こちらがようやく全てプリントを剥がした後の状態です。 苦心の作を是非ご覧ください。
プリントの出来上がり
こちらが出来上がったプリントです。 カプセルのイラストのプリントが完璧に再現されています。 さて、トーア復元研究所では数々のプリント剥がれ品を直してきましたが、プリントにもいろいろ種類があります。 ここでその代表的なものをご紹介しておきましょう。
ラバーシート
比較的耐久性が高く、大変多くのプリント製品に採用されている方法です。 デメリットは単色のものしかなく、既製品の20色の中から使う色を選ばねばならないという、バリエーションという点では見劣りすることが挙げられます。
DTF
比較的耐久性が弱いタイプのプリントですが、写真などのフルカラーのプリントも可能ですし、細い線や点のプリントも可能な大変高度なプリントが実現可能は方式です。
シルクスクリーン
版を作成し、それ用の染料を用いてプリントする方法です。 染料の使い方でいろいろなバリエーションが表現出来、染料自体の種類も豊富で、かなり細かい模様も可能です。 基本的に4色分版でフルカラーを表現しますので、写真のような高解像度のものは不向きです。
フロッキー
ベルベットのような風合いのプリントです。 見た目が大変豪華で高級感を演出出来ますが、着用・クリーニングなどにより起毛が取れたり凹みやすい、というデメリットがあります。
金・銀箔
金箔や銀箔のプリントというものもあります。 これらのプリントは絢爛豪華なイメージのものが出来上がりますので、大変見栄えがいいですが、着用やクリーニングで箔が剥がれてくることがあう上、薬品で変色したりすることがあります。
ラメ
きらびやかなラメのプリントも衣類を大変豪華にし、高級感を高めます。 その一方でこちらも箔同様、着用などで剥離や薬品での変色などのリスクがあります。